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  1. たび幻記/

尖塔が空を貫く古都 ― イギリス・ソールズベリー空想旅行記

空想旅行 ヨーロッパ 北ヨーロッパ イギリス
目次

水と尖塔の街へ

AIが考えた旅行記です。小説としてお楽しみください。

ソールズベリーは、イングランド南西部ウィルトシャー州に位置する、中世の面影を色濃く残す古都だ。エイヴォン川とその支流が交わる谷間に広がるこの街は、緑豊かなソールズベリー平原に抱かれている。

街の象徴は、何といってもソールズベリー大聖堂である。13世紀に38年という驚くべき短期間で建設されたこの聖堂は、イギリスで最も高い尖塔を持つ。その高さは123メートル。初期イングランド・ゴシック様式の傑作として知られ、建築様式の統一感が見る者を圧倒する。

そしてこの街を語るとき、外せないのがストーンヘンジとの関わりだ。世界遺産の巨石群は街から北西へわずか13キロメートル。ソールズベリーは太古の謎と中世の信仰、そして現代の暮らしが静かに共存する場所なのだ。

水の都という顔も持つ。街の中心を流れる川は、クイーン・エリザベス庭園をはじめとする公園に注ぎ込み、夏にはその緩やかな流れの中に足を踏み入れることもできるという。冬には洪水の懸念もあるというが、それもまた川と共に生きてきた街の歴史の一部だろう。

ロンドンのウォータールー駅から電車で約90分。時間がゆっくりと流れるこの街へ、私は2泊3日の旅に出た。

1日目: 大聖堂と川辺の静けさ

朝9時過ぎの電車でソールズベリーへ向かった。車窓を流れるのは、なだらかな丘陵と牧草地。イングランドの田園風景が広がっている。

駅に降り立つと、街の中心までは徒歩で20分ほどだという。フィッシャートン・ストリートを歩き始める。通りはそれほど広くなく、両脇には小さな店が並んでいる。5分ほど歩くと、エイヴォン川に架かる橋が見えてきた。その手前に立つのは、地元の人々が「リトル・ベン」と呼ぶ時計塔だ。かつては刑務所の一部だったというが、今は街のランドマークとして旅人を迎えている。

川を渡り、右手に曲がるとすぐに中世の教会が現れた。セント・トーマス・アンド・セント・エドモンド教会である。扉を押して中に入ると、壁に色鮮やかな壁画が残されていることに気づく。中世の信仰の熱気が、時を超えて伝わってくるようだった。

昼前、ハイ・ストリートを抜けて大聖堂の敷地へ向かった。ザ・クローズと呼ばれる聖堂を囲む一画は、高い壁に守られた静寂の空間だ。芝生が広がり、18世紀の邸宅が並ぶ。モンペッソン・ハウスの前を通り過ぎ、ゆっくりと大聖堂へ近づく。

そして、その姿が目の前に現れた瞬間、思わず立ち止まった。空へ向かって伸びる尖塔。繊細な石の彫刻。1220年から1258年にかけて建てられたとは思えないほど、今もなお力強く、美しい。

入口から中へ入ると、まず回廊と中庭が迎えてくれる。柱に施された彫刻の一つひとつに、職人の魂が宿っているように感じられた。身廊に進むと、高い天井とステンドグラスから差し込む光が、空間全体を神聖な雰囲気で包んでいる。

チャプターハウスへ向かう。ここには、1215年のマグナ・カルタの原本が展示されている。現存するのはわずか4通。そのうち最も保存状態の良いものがここにある。古い羊皮紙に記された文字を見つめながら、この文書が後のイギリス憲法やアメリカ独立宣言に影響を与えたことを思った。

大聖堂を出ると、昼食の時間だった。近くのカフェに入る。地元の人々で賑わう小さな店で、サンドイッチと紅茶を注文した。パンはしっかりとした歯ごたえがあり、中にはチーズとハムがたっぷりと挟まれている。紅茶は濃く淹れられていて、ミルクを注ぐとちょうど良い色になった。

午後は、街をゆっくりと散策することにした。フィッシュ・ロウを抜けると、ギルドホールの裏手にマーケットが開かれていた。火曜と土曜に立つという定期市で、その歴史は1227年まで遡るという。野菜や花、地元の工芸品などが並び、人々が品定めをしている。

ポルトリー・クロスと呼ばれる十字架の前で立ち止まる。15世紀に市場の目印として建てられたもので、今も街の中心に残る唯一の遺構だという。1852年に補修が施されたフライング・バットレスが、かつての賑わいを静かに物語っている。

夕方、エイヴォン川沿いを歩いた。クイーン・エリザベス庭園では、水が緩やかに流れている。川辺に腰を下ろし、水面を眺める。遠くで鳥の声が聞こえる。時折、散歩をする人が通り過ぎていくが、それ以外は静かだ。

夜は、川沿いのパブで夕食をとった。地元の人々で賑わう店で、フィッシュ・アンド・チップスを注文する。揚げたての白身魚は外側がサクサクとして、中はふっくらとしている。付け合わせのマッシュピーには、バターの香りがしっかりと効いていた。隣のテーブルでは、常連らしい老夫婦が静かに食事をしている。

ホテルへ戻る道、大聖堂の尖塔が夜空に浮かび上がっているのが見えた。ライトアップされたその姿は、昼間とはまた違った荘厳さを放っている。

2日目: ストーンヘンジと歴史の重層

朝、ホテルの朝食を済ませてから、駅へ向かった。ストーンヘンジ行きのバスは、駅前から出ている。大聖堂と入場券がセットになったチケットを購入し、バスに乗り込む。

30分ほど揺られると、広大な平原の中に巨石群が見えてきた。ストーンヘンジだ。紀元前3000年から2000年の間に建てられたとされる、新石器時代の遺跡。近づくにつれ、その規模の大きさに驚く。

ビジターセンターで音声ガイドを借りて、遺跡へ向かう。巨石は円形に配置され、最も重いものは25トンもあるという。どうやってこれほどの石を運び、立てたのか。音声ガイドは様々な説を紹介するが、謎は深まるばかりだ。

曇り空の下、巨石の周りをゆっくりと歩く。風が強く、平原を吹き抜けていく。この場所が何のために造られたのか。天文台だったのか、宗教儀式の場だったのか。確かなことは分からない。ただ、太古の人々がここに立ち、同じ空を見上げていたことだけは確かだ。

昼過ぎにソールズベリーへ戻り、遅めの昼食をとった。マーケットプレイス近くの小さなカフェで、地元の食材を使ったスープとパンを注文する。スープは温かく、じゃがいもとリーキが優しい味わいだった。

午後は、オールド・セーラムへ向かうことにした。ストーンヘンジ行きと同じバスで行けるという。現在のソールズベリーから北へ3キロほどの丘の上にある遺跡で、かつてはここに最初の大聖堂があった場所だ。

丘の上に立つと、眼下にソールズベリー平原が広がる。緑の草原と、遠くに見える現在の大聖堂の尖塔。1220年に聖職者たちがこの丘を離れ、川のほとりに新しい街を築いた理由が分かる気がした。ここは軍事拠点であり、聖職者と軍の関係は必ずしも良好ではなかったという。

今は建物の基礎部分と城壁の一部が残るのみだが、かつてここが賑やかな町だったことを示す痕跡がある。広大な敷地を歩きながら、ここから石を運び、新しい大聖堂を建てた人々の労苦に思いを馳せる。

夕方、街に戻ってザ・クローズを再び訪れた。大聖堂の東側に小さな教会がある。セント・オズモンド教会だ。オズモンドはソールズベリーの初期の司教で、ドゥームズデイ・ブックの編集に関わったという。教会の扉は開いていて、中に入ると静寂が迎えてくれた。

近くのアランデルズという邸宅の前を通り過ぎる。かつてのイギリス首相エドワード・ヒースが晩年を過ごした場所だ。イングリッシュガーデンが美しいと聞いていたが、閉館時間を過ぎていた。庭の一部が塀の外から見え、手入れの行き届いた花々が咲いているのが分かった。

夜は、少し雰囲気の良いレストランを選んだ。地元の食材を使ったイギリス料理の店で、ローストビーフを注文する。付け合わせのヨークシャープディングは、外側がカリッとして中はもちもちとしている。肉は柔らかく、グレイビーソースがよく合った。デザートには、伝統的なトライフルを選んだ。スポンジケーキとカスタード、生クリームが層になっていて、甘さが口の中で溶けていく。

食後、再び川沿いを歩いた。夜の街は静かで、川のせせらぎだけが聞こえる。ベンチに座り、流れる水を見つめる。この街での時間が、もう明日で終わることを思うと、少し寂しくなった。

3日目: 別れと、確かな記憶

最終日の朝は、少し早く目を覚まして川沿いを散歩した。朝靄の中、大聖堂の尖塔が霞んで見える。川辺には数羽の鴨がいて、水面を泳いでいる。誰もいない静かな時間。この瞬間を、記憶に焼き付けておきたいと思った。

ホテルをチェックアウトして、荷物を預け、もう一度大聖堂を訪れることにした。前日とは違う角度から眺めたくて、ザ・クローズの芝生を歩く。モンペッソン・ハウスの庭から見る大聖堂は、特に美しかった。

大聖堂の内部へ入り、世界最古の機械式時計の前で立ち止まる。1386年に製造されたこの時計は、今もなお時を刻んでいる。文字盤はなく、鐘の音で時刻を知らせるという。その単純な仕組みが、逆に力強さを感じさせる。

昼前、ハイ・ストリートのカフェで最後の食事をとった。チーズプラウマンズランチを注文する。チーズ、パン、ピクルス、チャツネというシンプルな組み合わせだが、それぞれの素材の味がしっかりとしていて、噛むほどに美味しい。紅茶を飲みながら、この3日間を振り返る。

大聖堂の尖塔、ストーンヘンジの巨石、オールド・セーラムの丘、川沿いの静けさ。そして、パブで交わした地元の人々との短い会話。カフェで聞こえてきた笑い声。全てが、確かにあった出来事として、心の中に残っている。

午後の電車でロンドンへ戻る時間が近づいてきた。駅へ向かう道、もう一度だけ振り返ると、街の向こうに大聖堂の尖塔が見えた。123メートルの高さで、800年近く空へ向かって伸び続けてきたあの塔が、今も変わらず立っている。

電車が動き出す。窓の外を流れていく田園風景を眺めながら、私はこの旅が終わることを実感する。でも同時に、この旅の記憶は終わらないことも知っている。ソールズベリーという街が、私の中にしっかりと刻まれたのだから。

空想でありながら、確かにあったもの

この旅は、空想のものだ。私は実際にソールズベリーの石畳を歩いてはいない。大聖堂の尖塔を見上げてもいないし、エイヴォン川の水に触れてもいない。フィッシュ・アンド・チップスの味も、パブの賑わいも、直接は知らない。

けれども、この旅の記憶は確かに存在する。文字を通じて、資料を通じて、そして想像を通じて、私はソールズベリーという場所と時間を共有した。マグナ・カルタを見つめ、ストーンヘンジの謎に思いを巡らせ、川辺で静寂の時を過ごした。

旅とは、必ずしも肉体の移動だけを意味しない。心が動き、想像が広がり、未知の場所が既知のものへと変わっていく。その過程もまた、旅と呼べるのではないだろうか。

いつか、本当にソールズベリーを訪れる日が来るかもしれない。その時、この空想の記憶が、現実の体験とどう重なり、どう異なるのかを確かめることができるだろう。でも、それまでの間、この架空の2泊3日は、私の中で確かな旅として存在し続ける。

ソールズベリー。水と尖塔の街。太古と中世が交わる場所。いつか、必ず訪れたい。その想いを胸に、私は次の旅へと目を向ける。

hoinu
著者
hoinu
旅行、技術、日常の観察を中心に、学びや記録として文章を残しています。日々の気づきや関心ごとを、自分の視点で丁寧に言葉を選びながら綴っています。

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