はじめに: コーカサスの宝石
トビリシ。その名前を口にするだけで、なぜか胸の奥が温かくなる。ジョージア (グルジア) の首都であるこの街は、コーカサス山脈の懐に抱かれ、クラ川が街を優しく分かつように流れている。
ヨーロッパとアジアの交差点に位置するこの国は、古くからシルクロードの要衝として栄え、多様な文化が混じり合って独特の魅力を醸し出している。ジョージア正教の教会の鐘の音がこだまする石畳の街並み、温泉が湧く丘陵地帯、そして何より人々の温かさ。旧ソ連の一部でありながら、決してロシア的ではない独自の文化を保ち続けてきた国だ。
ジョージア語の独特な文字、カルトヴェリ文字が街のあちこちに踊る。その曲線美は、まるで古代の詩を刻んだかのように美しい。ワイン発祥の地として知られ、8000年の歴史を持つワイン作りの伝統。クヴェヴリという素焼きの壺で醸造する古典的な手法は、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている。
料理もまた特別だ。ハチャプリ (チーズパン) 、ヒンカリ (小籠包のような餃子) 、ハルチョ (牛肉のスープ) など、どれも心を込めて作られた家庭の味がする。香辛料の使い方が絶妙で、辛すぎず、でも確かにスパイスの香りが口の中に広がる。
トビリシの旧市街アバノトゥバニには、硫黄温泉が湧いている。街の名前の語源とも言われる「トビリ」は「温かい」という意味だ。温泉を中心に発展したこの街は、どこか日本の温泉街にも似た、ゆったりとした時間が流れている。

1日目: 石畳に響く足音と、初めての出会い
成田からイスタンブール経由でトビリシへ。長い空の旅を終えて、ショタ・ルスタヴェリ国際空港に降り立ったのは午後2時頃だった。空港から市内へのバスの中で、窓外に広がる風景に釘付けになった。緑豊かな丘陵地帯に、時折現れる古い教会の尖塔。そして遠くに見えるコーカサス山脈の雄大な稜線。
宿泊先のホテルは旧市街の中心部、ルスタヴェリ大通りから少し入った静かな通りにある。チェックインを済ませ、荷物を置いてすぐに街歩きに出た。午後の陽射しが石造りの建物に当たって、金色に輝いている。
まず向かったのは、街を見下ろすナリカラ要塞だった。4世紀に建設されたというこの古い城塞へは、ケーブルカーで登ることもできるが、歩いて登ることにした。石畳の坂道は急だが、途中途中で振り返ると、眼下に広がるトビリシの街並みが息を呑むほど美しい。オレンジ色の瓦屋根が連なり、その間を縫うように流れるクラ川。対岸には近代的な建物も見えるが、それがかえって街の歴史の重層性を感じさせる。
要塞の頂上に着いた時、風が頬を撫でていった。ここから見るトビリシは、まさに絵画のようだった。夕方近くになり、陽の光がより斜めに差し込んで、街全体が柔らかな陰影に包まれている。隣にいた地元の老人が、片言の英語で「Beautiful, yes?」と話しかけてきた。彼の優しい笑顔に、早くもこの国の人々の温かさを感じた。
要塞から下りて、旧市街のアバノトゥバニ地区を歩く。ここが温泉街だと聞いていたが、確かに硫黄の香りがほのかに漂っている。石畳の路地は迷路のように入り組んでいて、どこを歩いても新しい発見がある。バルコニーから洗濯物がはためき、窓辺に置かれた鉢植えの花が通りを彩っている。
夕食は、地元の人に勧められた「Shavi Lomi」という小さなレストランで。店内は薄暗く、キャンドルの明かりが温かい。注文したのは、ジョージア料理の定番ハチャプリ・アチャルリ (アジャリア風チーズパン) とヒンカリ (ジョージア風餃子) 。
ハチャプリが運ばれてきた時、その大きさに驚いた。舟の形をしたパンの中央に、とろとろのチーズと生卵、そしてバターが乗っている。熱々のうちにかき混ぜて食べるのだが、チーズの濃厚さと卵のまろやかさが絶妙に絡み合う。ヒンカリは小籠包のような形で、中に牛肉とスパイスの効いたスープが入っている。上手に食べるコツは、まず上の部分を少し齧って中のスープを飲み、それから全体を食べることだと、ウェイターが親切に教えてくれた。
食事と一緒に頼んだジョージアワインは、クヴェヴリ製法の赤ワイン。土の香りがほのかにして、日本で飲むワインとは全く違う複雑な味わいだった。ぶどうの皮や種も一緒に発酵させるため、タンニンが強く、最初は戸惑ったが、料理と合わせると不思議に調和する。
レストランを出ると、街はすっかり夜の装いになっていた。街灯に照らされた石畳が美しく、時折聞こえる教会の鐘の音が夜の静寂に溶けていく。ホテルへの帰り道、小さな広場でジョージアの伝統音楽を演奏している男性たちに出会った。独特の多声合唱、ポリフォニーの美しい響きが夜空に響いている。立ち止まって聞いていると、一人の演奏者が微笑みかけてくれた。
ホテルの部屋に戻り、一日を振り返る。まだ一日目だというのに、すでにこの街に魅了されている自分がいる。窓を開けると、遠くから聞こえる川のせせらぎと、時折響く夜鳥の鳴き声。トビリシの初日は、静かな感動とともに終わっていった。
2日目: 古き祈りと新しい発見の間で
朝は、ホテル近くのカフェで伝統的なジョージアの朝食から始まった。「Café Littera」という、19世紀の建物を改装したお洒落なカフェだ。中庭のテラス席に座り、ジョージアン・ブレックファストを注文する。焼きたてのショティ (ジョージアパン) に、ナドゥギ (カッテージチーズに似たフレッシュチーズ) とはちみつ、そして山盛りの新鮮なハーブが運ばれてきた。
パンは外側がパリッと、中がもっちりとして、ナドゥギの優しい酸味とはちみつの甘さが完璧に調和している。ハーブはパクチー、ディル、バジルなど数種類が混ざっていて、口の中が一気に爽やかになる。ジョージアの人々がいかに新鮮なハーブを大切にしているかが分かる。朝のコーヒーは濃厚で、この軽やかな朝食によく合った。
朝食後、トビリシで最も美しいとされるシオニ大聖堂へ向かった。6世紀に建設されたこの教会は、ジョージア正教の総本山だ。重厚な石造りの外観と対照的に、内部は静謐で神聖な空気に満ちている。朝の祈りの時間だったのか、何人かの信者が静かに祈りを捧げていた。
祭壇の前に立つと、金箔で装飾されたイコノスタシス (聖障) の美しさに息を呑んだ。ジョージア正教独特の聖人画が、ろうそくの明かりに揺らめいている。司祭の低い声で唱えられる祈りの言葉が、石造りの聖堂内に厳かに響いている。宗教を超えて、人々の祈りの純粋さに心が洗われるような感覚だった。
大聖堂を出て、すぐ近くにあるアンチスハティ聖堂も訪れた。こちらは6世紀に建てられたトビリシ最古の教会だ。こじんまりとしているが、その分より親しみやすい雰囲気がある。中に入ると、地元の女性が一人、静かに祈りを捧げていた。彼女の後ろ姿が、長い歴史の中で数え切れない人々がここで祈りを捧げてきたことを物語っているようだった。
午前中の最後に訪れたのは、メテヒ教会だった。クラ川を見下ろす岩山の上に建つこの教会は、13世紀の建造だ。教会の前には、ジョージアの王ワフタング・ゴルガサリの騎馬像が立っている。彼がこの地にトビリシを築いたとされる伝説の王だ。
教会内部はシンプルだが、美しいフレスコ画が残されている。そして何より、ここからの眺めが素晴らしい。クラ川が街を蛇行して流れ、対岸の新市街のモダンな建物群と旧市街の古い街並みが見事に調和している。川に架かるピース・ブリッジ (平和の橋) も美しく、まさにこの街の新旧融合の象徴のようだった。
昼食は川沿いのレストラン「Funicular Restaurant Complex」で。ケーブルカー駅の上にあるこのレストランは、街を一望できる絶好のロケーションだ。注文したのは、ハルチョ (ジョージア風牛肉スープ) とムツヴァディ (ジョージア風ケバブ) 。
ハルチョは、牛肉がとろとろに煮込まれたスープで、米とクルミ、そして独特のスパイスが入っている。最初は少し酸味があるなと思ったが、それはザクロの酸味だった。ムツヴァディは、炭火で焼いた牛肉の串焼きで、外はカリッと中はジューシー。付け合わせの赤玉ねぎのサラダが、肉の脂っこさを中和してくれる。
午後は、トビリシ国立美術館を訪れた。ジョージアの画家ニコ・ピロスマニの作品を中心に、この国の豊かな芸術文化に触れることができた。ピロスマニの素朴で力強い絵画は、ジョージアの人々の生活と心情を率直に表現していて、見ているうちにこの国への理解が深まっていく気がした。
美術館を出た後は、ドライブリッジ (乾橋) の古本市を散策。週末だけ開かれるこの市場では、古い本や絵葉書、ソ連時代の品々などが売られている。ジョージア語の古い本は読めないが、カルトヴェリ文字の美しさに魅せられて、詩集を一冊購入した。売り手のおじいさんは、この詩集の作者について熱心に説明してくれたが、残念ながらほとんど理解できなかった。それでも、彼の文学への愛情は十分に伝わってきた。
夕方は、旧市街の温泉施設「Abanotubani Sulfur Spa」で温泉に浸かった。トビリシの温泉は、硫黄成分が豊富で美肌効果があるとされている。個室になっている温泉は、石造りで雰囲気があり、お湯は少し熱めだが疲れが一気に取れる。日本の温泉とは少し違うが、やはり温泉は心身ともにリラックスできる。
温泉でさっぱりした後は、再び旧市街を散策。夕暮れ時の旧市街は特別に美しい。石造りの建物が夕陽に染まり、バルコニーから垂れ下がるブドウの蔓が風に揺れている。小さな路地を歩いていると、窓から漂ってくる夕食の匂いに、どこか懐かしい気持ちになった。
夕食は「Barbarestan」という、19世紀のジョージア料理を再現するレストランで。ここは、19世紀のレシピ本を基に古典的なジョージア料理を提供している。前菜に注文したプハリ (野菜とナッツのペースト) は、ほうれん草、ビーツ、インゲン豆など色とりどりで、それぞれにクルミペーストが使われている。クルミの濃厚さと野菜の自然な甘さが絶妙だった。
メインはチャホフビリ (鶏肉のトマト煮込み) 。鶏肉がとても柔らかく、トマトソースには香草がたっぷり使われている。付け合わせのゲオミ (コーンブレッド) は、少し甘みがあってトマトソースによく合った。
食事の最後に出されたチュルチヘラ (ナッツの砂糖漬け) は、ぶどうの果汁を煮詰めたものにくるみを通したお菓子で、自然な甘さが印象的だった。形がろうそくのようで、最初は驚いたが、食べてみると優しい甘さでとても美味しい。
レストランを出ると、街はライトアップされて昼間とは違う表情を見せていた。ナリカラ要塞もライトアップされ、街全体が温かな光に包まれている。ホテルへの帰り道、小さな教会の前で立ち止まった。夜でも扉が開いていて、中からはろうそくの明かりが漏れている。何人かの人が静かに祈りを捧げていた。宗教が人々の生活に自然に溶け込んでいるこの国の文化の深さを感じた。
3日目: 別れの調べと心に刻まれた記憶
最後の朝は、ホテルのテラスで迎えた。トビリシの街が朝の光の中でゆっくりと目を覚ましていく様子を眺めながら、この2日間を振り返っていた。短い滞在だったが、この街の魅力を十分に感じることができた。
朝食後、最後の散策に出かけた。向かったのは、まだ訪れていなかったトビリシ植物園だった。ナリカラ要塞の下に広がるこの植物園は、1845年に設立された歴史ある施設だ。入口から続く小道を歩いていくと、世界各地から集められた植物が出迎えてくれる。
特に印象的だったのは、コーカサス地方固有の植物たちだった。高山植物のセクションでは、この地域でしか見られない珍しい花々が咲いている。植物園の職員の方が、英語で色々と説明してくれた。彼は植物学を学んだそうで、ジョージアの自然環境の特殊性について熱心に語ってくれた。コーカサス山脈という自然の壁が、独特の生態系を育んでいることがよく分かった。
植物園の奥には小さな滝があり、その音が静寂を破っている。ベンチに座って、しばらくその音に耳を傾けていた。都市の中心部にありながら、ここは別世界のように静かで平和だった。時折、鳥のさえずりが聞こえ、風が木々を揺らす音がする。
植物園を出て、最後にもう一度旧市街を歩いた。今度は特に目的地を決めず、足の向くままに歩いてみた。細い路地に入ると、地元の人たちの日常生活が垣間見える。洗濯物を干すお母さん、路地で遊ぶ子どもたち、門の前でお茶を飲みながら井戸端会議をしている年配の女性たち。
そんな中、一人の少女が私に向かって手を振ってくれた。彼女のあどけない笑顔に、思わず笑顔で応えた。言葉は通じないが、笑顔は万国共通だ。こういう何気ない交流が、旅の一番の宝物だと思う。
昼食は、最後なので奮発して「Culinarium Khasheria」という高級レストランで。ここは伝統的なジョージア料理を現代風にアレンジしたメニューで有名だ。コースメニューを注文し、ジョージア料理の真髄を味わった。
前菜のバドリジャニ・ニグヴジット (茄子のクルミペースト巻き) は、見た目が美しく、味も繊細だった。薄切りの茄子にクルミペーストとスパイスを塗って巻いたもので、茄子の甘みとクルミの濃厚さ、そしてスパイスの香りが絶妙にバランスしている。
メインのチキン・サツィビは、冷製の鶏肉料理で、クルミとニンニクのソースがかかっている。伝統的には新年に食べる料理だそうで、複雑な味わいがある。デザートのペラムシ (ぶどうの濃縮ジュースのプリン) は、自然な甘さで食事の締めくくりに相応しかった。
食事と一緒に飲んだジョージアワインは、白ワインのルカツィテリ。フルーティーで飲みやすく、魚料理にもよく合った。ソムリエの方が、ジョージアワインの歴史について詳しく説明してくれた。8000年の歴史を持つワイン造りの伝統は、この国の誇りなのだと改めて感じた。
午後は、お土産を買いにドライマーケット (乾物市場) へ。ここには、ジョージアの特産品がところ狭しと並んでいる。スパイス、ナッツ、ドライフルーツ、蜂蜜、ワインなど、見ているだけでも楽しい。特に印象的だったのは、色とりどりのスパイスが山積みになった店だった。
香辛料の香りが鼻をくすぐり、店主のおじさんが様々なスパイスを試食させてくれた。ジョージア料理に欠かせないフメリ・スネリ (ミックススパイス) を購入した。これがあれば、家でもジョージア料理の味を再現できるかもしれない。
蜂蜜の店では、様々な花から採れた蜂蜜を味見させてもらった。栗の花の蜂蜜は少し苦みがあり、ライムの花の蜂蜜は爽やかな香りがする。結局、アカシアの蜂蜜を購入した。これも日本では手に入らない貴重なものだ。
市場を歩いていると、チュルチヘラを作っている店を見つけた。職人さんが丁寧に糸に通したクルミを、煮詰めたぶどう果汁に何度も浸して作っている。昨日食べて美味しかったので、自分用と家族へのお土産用に購入した。
最後に、ワインショップでクヴェヴリ製法の赤ワインを1本購入した。店主の方が、このワインの特徴と飲み方について丁寧に説明してくれた。土の中に埋めたクヴェヴリ (素焼きの壺) で醸造するこの製法は、世界でも類を見ない独特のものだ。
夕方、ホテルに戻って荷造りをした。スーツケースに詰め込んだお土産の一つ一つに、この2日間の思い出が詰まっている。明日の朝早くには空港へ向かわなければならない。
最後の夕食は、初日に訪れた「Shavi Lomi」に再び行くことにした。この店の温かい雰囲気がとても気に入っていたからだ。今度は、ジョージアの伝統的なスープ、チホルトマとキンクリ (コリアンダー入りスープ) を注文した。
チホルトマは、牛肉と野菜が入った濃厚なスープで、寒い季節にぴったりの温かさだった。キンクリは、コリアンダーの香りが効いた軽やかなスープで、日本人の味覚にもよく合う。
食事をしながら、ウェイターの青年と話をした。彼は大学で英語を学んでいるそうで、将来はツアーガイドになりたいと話してくれた。ジョージアに対する愛情を熱く語る彼の姿が印象的だった。この国の若い人たちが、自分たちの文化に誇りを持っていることがよく分かった。
レストランを出ると、もう夜も更けていた。最後にもう一度、ライトアップされた旧市街を歩いた。昼間とは違う、夜の静けさの中で、この街の美しさを心に焼き付けようとした。
ナリカラ要塞の明かりが街を見下ろし、クラ川が静かに流れている。明日にはこの街を離れるのだと思うと、少し寂しくなった。短い滞在だったが、トビリシはすっかり私の心の一部になっていた。
ホテルに戻る途中、小さな教会の前を通った。扉は開いていて、中からろうそくの明かりが漏れている。思わず中に入ってみた。静寂の中で、今回の旅への感謝の気持ちを込めて、静かに手を合わせた。宗教は違うが、平和への祈りは同じだろう。
ホテルの部屋で、最後の夜を過ごした。窓から見えるトビリシの夜景を眺めながら、この2日間のことを振り返った。美しい建築、温かい人々、美味しい料理、深い文化。すべてが心に深く刻まれている。
最後に: 空想でありながら確かに感じられたこと
この旅は、AI によって描かれた空想の旅だ。しかし、不思議なことに、確かにそこにいたような感覚が残っている。トビリシの石畳を歩く足音、硫黄温泉の香り、ハチャプリの熱々のチーズ、教会で聞いた祈りの声、植物園の滝の音、市場のスパイスの香り。これらすべてが、まるで実際に体験したかのように心に刻まれている。
旅とは、単に場所を移動することではなく、心が動くことなのかもしれない。実際に足を運ばずとも、想像力によって遠い国の文化に触れ、人々の営みを感じ、その土地の空気を吸うことができる。それは、人間の想像力の素晴らしさでもあり、同時にその土地が持つ本当の魅力の証拠でもあるだろう。
ジョージア・トビリシという街は、確かに存在する。コーカサス山脈の懐に抱かれ、クラ川が流れ、温泉が湧き、8000年のワイン作りの歴史を持つ。ジョージア正教の教会があり、独特の文字があり、ハチャプリやヒンカリといった料理がある。これらはすべて現実だ。
そして、そこには温かい人々が住んでいる。彼らは訪れる人を歓迎し、自分たちの文化を誇りに思い、それを分かち合おうとする。これも間違いなく現実だろう。
この空想の旅が終わっても、トビリシへの憧れは残っている。いつか本当にあの街を訪れ、実際にハチャプリを食べ、クヴェヴリワインを飲み、温泉に浸かり、教会の鐘の音を聞いてみたい。そのときには、この空想の旅の記憶と現実の体験が重なり合って、より豊かな旅になることだろう。
空想でありながら確かにあったように感じられる旅。それは、人と人、文化と文化をつなぐ、想像力という名の橋なのかもしれない。

