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  1. たび幻記/

北欧の静寂に響く学びの街 ― スウェーデン・ウプサラ空想旅行記

空想旅行 ヨーロッパ 北ヨーロッパ スウェーデン
目次

北欧の知性が息づく古都

AIが考えた旅行記です。小説としてお楽しみください。

ストックホルムから北へ列車で約40分。スウェーデン第四の都市ウプサラは、古くから学問と信仰の中心地として栄えてきた。15世紀に創設された北欧最古のウプサラ大学は、リンネやセルシウスといった偉大な学者を輩出し、今も2万人を超える学生が通う。街の中心には、北欧最大級のゴシック様式の大聖堂が威容を誇り、その尖塔は緑の木々の向こうから訪問者を迎え入れる。

この街は規模こそ大きくないが、歴史の重みと若い知性が共存する独特の雰囲気を持っている。中世の面影を残す石畳の通り、フィーリス川沿いに並ぶカラフルな木造家屋、そして郊外に広がる牧歌的な田園風景。秋のウプサラは、木々が黄金色に染まり、北欧の澄んだ光が街全体を柔らかく包み込む。

私がこの街を訪れることにしたのは、喧騒から離れた静かな時間を過ごしたかったからだ。大きな観光地ではない、けれど確かな文化と歴史が根付いている場所。2泊3日の短い滞在で、私はウプサラの静謐な魅力に触れることになる。

1日目: 石畳の街に降り立つ

ストックホルム中央駅からウプサラ行きの列車に乗り込んだのは、午前10時過ぎだった。車窓からは湖と森が交互に現れ、やがて平らな農地が広がり始める。スウェーデンの秋は短く、すでに木々は黄色から茶色へと移り変わりつつあった。空は高く、雲が薄く広がっている。列車には通勤する人、学生らしき若者、観光客と思しき家族連れが乗り合わせていた。

ウプサラ駅に着くと、思ったよりも小さな駅舎に少し驚いた。しかしその簡素さが、この街の実直な性格を表しているようにも思えた。駅前からまっすぐ延びるバンガータン通りを歩き始める。道の両脇には書店、カフェ、学生向けの衣料品店などが並び、平日の昼間だというのに若者の姿が多い。大学都市ならではの活気がある。

15分ほど歩くと、宿泊先のホテルに到着した。旧市街に近い小さなホテルで、受付のスタッフは流暢な英語で迎えてくれた。部屋は簡素だが清潔で、窓からは隣のアパートの中庭が見える。荷物を置いて、すぐに街歩きに出かけることにした。

まず向かったのは、ウプサラのシンボルでもあるウプサラ大聖堂だ。13世紀に建設が始まり、完成まで150年以上を要したというこの大聖堂は、高さ118メートルの双塔を持つ北欧最大級のゴシック建築である。近づくにつれ、その圧倒的な存在感に息を呑んだ。赤レンガ造りの外壁は、歳月を経て深い色合いを帯びている。

重厚な扉を開けて中に入ると、ひんやりとした空気と静寂が迎えてくれた。天井は想像以上に高く、細長い窓から差し込む光が石柱を照らしている。奥へ進むと、スウェーデン王グスタフ・ヴァーサの墓があった。16世紀にカルマル同盟を解消し、スウェーデンを独立国家へと導いた王だ。その隣には、植物学者カール・フォン・リンネの墓もある。世界中の動植物に学名をつける「二名法」を確立した彼は、ウプサラ大学の教授だった。

大聖堂を出ると、すぐ隣にグスタヴィアヌムという黄色い建物が見えた。17世紀に建てられたウプサラ大学最古の校舎で、現在は博物館になっている。最上階には解剖劇場があり、当時の医学教育の様子を垣間見ることができる。円形の劇場は小さく、観客席は急な階段状になっていて、学生たちが身を乗り出して解剖を見学した様子が想像できた。

午後も半ばを過ぎ、少し空腹を感じ始めた頃、大聖堂近くの小さなカフェに入った。「Café Linné Hörnan」という名前の、地元の人に愛されていそうな店だ。メニューを見ると、オープンサンドイッチやスープがあった。私はスモークサーモンのオープンサンドイッチとコーヒーを注文した。黒パンの上にたっぷりのサーモン、ディル、そしてレモンが載っている。シンプルだが、素材の味がしっかりしていて美味しい。窓際の席に座り、通りを行き交う人々を眺めながらゆっくりと食事をした。

カフェを出て、フィーリス川沿いを歩くことにした。川は街の中心を緩やかに流れ、両岸には色とりどりの木造家屋が並んでいる。ピンク、黄色、赤、緑。まるで絵本の中の風景のようだ。川には小さな橋がいくつもかかっていて、その上から川面を眺める人、ジョギングする人、犬を散歩させる人がいた。秋の夕暮れは早く、4時を過ぎると光が柔らかくなり始める。

川沿いを上流へ向かって歩くと、やがてウプサラ城が見えてきた。丘の上に建つこの城は、16世紀にグスタフ・ヴァーサ王によって建設された。現在は博物館と州知事の公邸として使われている。城の前庭からは、ウプサラの街が一望できた。大聖堂の双塔、大学の建物、そして遠くには森が広がっている。風が少し冷たくなってきた。

夕食は、旧市街の小さなレストラン「Domtrappkällaren」で取ることにした。地下にある歴史的なレストランで、石造りのアーチ型天井が雰囲気を醸し出している。メニューにはスウェーデン料理が並んでいて、私はトナカイ肉のステーキを選んだ。添えられているのは、リンゴンベリーのソース、マッシュポテト、そして季節の野菜。トナカイ肉は思ったよりも柔らかく、甘酸っぱいリンゴンベリーがよく合う。ゆっくりと食事をし、スウェーデンのビールを一杯だけ飲んだ。

ホテルに戻ると、窓の外はすっかり暗くなっていた。シャワーを浴びて、ベッドに横になる。初日は移動と街歩きで疲れたが、心地よい疲労だった。静かな街、穏やかな人々、そして歴史の重み。ウプサラの第一印象は、想像以上に温かいものだった。

2日目: リンネの庭と学生たちの街

朝、ホテルの朝食ルームで簡素なスカンジナビアン・ブレックファストを取った。ライ麦パン、チーズ、ハム、ゆで卵、そしてコーヒー。窓の外を見ると、空はまだ薄暗いが、街はすでに動き始めている。自転車で通学する学生、パン屋に入る老人、バスを待つ人々。

この日は、カール・フォン・リンネゆかりの場所を訪れることにしていた。まず向かったのは、リンネ庭園だ。大学の植物園で、リンネが教授時代に教材として使用していた場所である。入口で入場料を払い、中に入ると、秋の庭園が広がっていた。夏の華やかさはもうないが、晩秋の花々がひっそりと咲いている。

庭園は整然と区画されていて、それぞれに異なる植物が植えられている。リンネが世界中から集めた植物の子孫たちだ。案内板には学名と分類が記されている。彼が確立した二名法は、今も世界中で使われている。一人の学者の仕事が、これほど長く受け継がれていることに感慨を覚えた。

庭園の奥には、リンネが住んでいた家が保存されている。黄色い木造の建物で、中に入ると当時の家具や調度品が展示されていた。書斎には古い書物や標本が並び、リンネがここで研究に没頭していた様子が目に浮かぶ。窓からは庭園が見え、彼もこの窓から植物たちを眺めていたのだろうと思うと、時間を超えたつながりを感じた。

庭園を出て、次に向かったのはリンネ博物館だ。ここは彼が晩年を過ごした邸宅で、街の中心から少し離れた静かな場所にある。中には彼の遺品、手紙、標本コレクションなどが展示されている。特に印象的だったのは、彼が学生たちと行ったフィールドワークの記録だ。ウプサラ周辺の森や湿地を歩き回り、植物を採集し、分類していく。その地道な作業の積み重ねが、現代の生物学の基礎を築いた。

博物館を出る頃には正午を過ぎていた。少し早いが昼食を取ることにして、大学地区にある学生食堂に向かった。ウプサラ大学には一般にも開放されている食堂があり、リーズナブルな価格でスウェーデン料理が食べられる。この日のメニューは、ミートボールとマッシュポテト、それにリンゴンベリーのジャム。スウェーデアの定番料理だ。クリーミーなソースがかかったミートボールは、家庭の味を感じさせる素朴な美味しさだった。

食堂には学生たちがグループで座り、スウェーデン語で話している。時折笑い声が聞こえ、活気がある。私も彼らに混じって食事をしていると、自分もこの大学の一員になったような不思議な感覚を覚えた。

午後は、大学図書館カロリーナ・レディヴィーヴァを訪れた。17世紀に建てられたこの図書館は、銀の聖書として知られる「コデックス・アルゲンテウス」を所蔵していることで有名だ。6世紀に書かれたゴート語の聖書写本で、銀のインクで羊皮紙に書かれている。展示室で実物を見ると、その美しさに息を呑んだ。1400年以上前の文字が、今もこうして輝いている。

図書館の閲覧室も見学させてもらった。高い天井、木製の書架、長いテーブルに向かって勉強する学生たち。静寂の中で、ページをめくる音だけが響く。この空間には、何百年も続く学問への敬意が満ちていた。

図書館を出て、キャンパスを散策した。ウプサラ大学のキャンパスは街中に点在していて、歴史的な建物と現代的な建物が混在している。学生たちは自転車で移動し、芝生に座って話し込み、カフェでコーヒーを飲んでいる。誰もが自然体で、のびのびとしている。

夕方、再びフィーリス川沿いを歩いた。昨日とは反対方向へ、下流に向かって進む。川沿いには小さな公園があり、ベンチに座って本を読む人、川を眺める人がいた。私もベンチに座り、流れる水を見つめた。川面には夕日が反射し、金色に輝いている。風が冷たいが、心地よい。

夕食は、少しカジュアルな店にしようと思い、「Hambergs Fisk」というシーフードレストランに入った。ここはウプサラで人気の魚料理専門店だ。私は白身魚のフライとポテト、そしてレムラードソースのセットを注文した。揚げたての魚はサクサクで、レムラードソースの酸味がちょうどいい。地元のビールと一緒に、ゆっくりと味わった。

ホテルに戻る道すがら、ライトアップされた大聖堂が闇に浮かび上がっているのが見えた。昼間とは違う、荘厳な美しさがある。石畳の通りは静かで、時折通り過ぎる人の足音だけが響く。2日目の夜は、1日目よりもウプサラという街を身近に感じながら更けていった。

3日目: 別れの朝と、持ち帰るもの

最終日の朝は、少し早く目が覚めた。窓の外はまだ薄明かりの中にある。この日の午後にはストックホルムへ戻る列車に乗らなければならない。短い滞在だったが、できるだけ多くのウプサラを感じて帰りたいと思った。

朝食後、チェックアウトまでの時間を使って、もう一度旧市街を歩くことにした。早朝の街は静かで、開いている店もまだ少ない。石畳の道を歩き、大聖堂の前を通り、川沿いの道を進む。昨日、一昨日と何度も歩いた道だが、見るたびに違う表情を見せてくれる。

ふと、小さなベーカリーが開いているのを見つけた。「Güntherska」という、1850年創業の老舗カフェ兼パン屋だ。中に入ると、焼きたてのパンの香りが漂っている。ショーケースには、シナモンロール、カルダモンロール、プリンセスケーキなど、スウェーデンの伝統的な菓子が並んでいる。私はカルダモンロールとコーヒーを注文し、店内の小さなテーブルに座った。

カルダモンロールは、ふわふわで甘く、カルダモンの香りが口いっぱいに広がる。コーヒーは深煎りで、パンによく合う。窓の外では、街が少しずつ目覚め始めている。パン屋に朝食を買いに来る人、犬を散歩させる人、通勤する人。平凡な、けれど確かな日常がそこにある。

ホテルに戻り、荷物をまとめてチェックアウトした。まだ列車の時間までは余裕があったので、最後にもう一か所訪れたい場所があった。ガムラ・ウプサラ、つまり「古ウプサラ」だ。街の中心から北へ数キロ離れた場所にある、ヴァイキング時代の遺跡である。

バスに乗って約20分、のどかな田園風景の中を進むと、ガムラ・ウプサラに着いた。ここには三つの大きな墳墓があり、6世紀から7世紀にかけてのスウェーデン王が葬られていると言われている。墳墓は草に覆われた小高い丘のようになっていて、周囲には柵も何もない。ただ静かに、そこに存在している。

丘に登ってみた。頂上からは、緑の牧草地と森が広がっているのが見える。風が強く、草が波打っている。ここには1500年近く前、北欧の人々が暮らし、戦い、祈り、死んでいった。キリスト教が伝来する前の、北欧神話の神々が信じられていた時代だ。今は観光客もまばらで、静寂だけがある。

墳墓の近くには小さな博物館があり、当時の遺物や生活の様子が展示されていた。武器、装飾品、日常の道具。彼らもまた、私たちと同じように生き、愛し、悩んでいたのだろう。時代は変わっても、人間の本質は変わらない。そんなことを考えながら、博物館を後にした。

ウプサラの中心部に戻り、駅へ向かう前に最後の昼食を取った。駅近くのカフェで、スウェーデン風のミートパイとスープを頼んだ。シンプルだが温かい食事だ。窓の外では、列車が発着している。旅の終わりが近づいている。

午後2時過ぎ、ウプサラ駅のホームに立った。ストックホルム行きの列車がやってくる。ドアが開き、乗客が降りてくる。私は列車に乗り込み、席に座った。列車が動き出すと、ウプサラの街がゆっくりと遠ざかっていく。大聖堂の尖塔が、木々の間から見える。やがてそれも見えなくなり、車窓には森と畑が広がるばかりになった。

2泊3日という短い滞在だったが、ウプサラは私に多くのものを与えてくれた。歴史の重み、学問への敬意、静かな日常の美しさ、そして人々の穏やかさ。大きな観光地ではないこの街は、しかし確かな魅力を持っていた。それは派手さではなく、深さだった。表面的な楽しさではなく、静かに心に染み入るような体験だった。

列車はストックホルムへと向かって走り続ける。私は窓に額を預け、流れる景色を眺めながら、ウプサラで過ごした時間を反芻していた。

空想の中の確かな記憶

この旅は、実際には行われなかった旅である。私がウプサラの石畳を歩いたことも、大聖堂の中で静寂に包まれたことも、リンネ庭園で植物を眺めたことも、すべては空想の中の出来事だ。

けれど、この旅を想像する過程で、ウプサラという街は私の中で確かに存在するようになった。北欧最古の大学、ゴシック様式の大聖堂、フィーリス川沿いのカラフルな家々、リンネの遺産、そしてヴァイキング時代の墳墓。これらはすべて実在する場所であり、実在する歴史だ。

旅とは、ただ場所を移動することではない。その土地の空気を感じ、歴史に触れ、文化を味わい、そして自分自身と向き合うことだ。たとえそれが空想の中であっても、真摯に想像し、調べ、感じることで、旅は心の中で現実になる。

いつか本当にウプサラを訪れることがあるかもしれない。その時、この空想の旅で感じたことは、実際の体験と重なり合い、より深い理解をもたらしてくれるだろう。あるいは、実際には訪れることがないかもしれない。それでも、この空想の旅は私の中に残り続ける。

hoinu
著者
hoinu
旅行、技術、日常の観察を中心に、学びや記録として文章を残しています。日々の気づきや関心ごとを、自分の視点で丁寧に言葉を選びながら綴っています。

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