2025年7月上旬、アメリカで提供されている安全衛生トレーニングプログラムのひとつ「OSHA 30 General Industry」をオンラインで受講・修了しました。
このコースは、米国労働安全衛生局 (OSHA: Occupational Safety and Health Administration) のガイドラインに基づいており、一般産業 (General Industry) で働く人々向けに、安全な職場環境を作るための知識を体系的に学ぶものです。製造業、物流、倉庫業、小売業、教育機関など、さまざまな分野に応用できる汎用的な内容となっています。
OSHA とは
OSHA (Occupational Safety and Health Administration: 労働安全衛生局) は、アメリカ労働省に属する機関で、職場の安全と健康を守るためのルール作りと監督を担っています。1970年に設立されて以来、アメリカ国内ではOSHAのガイドラインが、あらゆる業種の基準として使われてきました。
そのOSHAが提供する代表的な教育プログラムが、「OSHA 10」と「OSHA 30」です。数字は所要時間 (10時間、30時間) を示しており、内容の深さや職務への関わり度合いによって選び分けます。
そして、OSHAコースには大きく2つの分類があります。
- General Industry (一般産業): 製造業、倉庫業、流通、小売、医療、教育など、建設現場以外の幅広い分野をカバー
- Construction (建設業): 建設現場、土木、鉄骨、仮設足場などでの安全を中心に扱う
Constructionの方が「現場向けでフィジカルな危険への対応が中心」、Generalは「仕組みや制度、広義の“安全文化”までをカバーしている」といった違いがあります。
私は実務で建設に関わるわけではないため、General Industryのコースを選びました。
コースの概要と受講スタイル
私が利用したのは、アメリカのオンライン教育プロバイダ「360training」です。タイミングよくセール期間中で、受講料は通常$189ドルから割引の$159.99と、初回割引の10%オフで、合計$144+税でした。
コースはすべて英語で提供され、構成は以下の通りです
- ビデオ教材 (30時間以上)
- 各章ごとの演習問題 (10問前後)
- 修了試験
私は主に平日の夜と週末に4〜5時間ずつ時間を確保し、約1週間で修了しました。集中して取り組めば短期間で終えることも可能です。
ただし、注意点が一つ。OSHA 30は「時間ベース」での修了が求められており、たとえすべての教材を一度見終えても、累計30時間以上の学習時間が記録されていなければ修了と見なされません。
私は途中でスマホとPCを切り替えて視聴していたため、何度か学習時間が正常にカウントされず、章をやり直す羽目になりました。できる限り、同じデバイスを使い続けることをおすすめします。
学べること
General Industryコースは20以上のモジュールで構成されており、その内容は実に幅広いです。印象に残っているものをいくつか挙げてみます。
- Introduction to OSHA: OSHAの設立背景、労働者の権利、雇用者の責任など、制度の基本。
- Hazard Communication (HazCom): 化学物質のラベルやSDS (Safety Data Sheet) 、GHS表示などの国際基準に沿ったリスクの伝達方法。
- Personal Protective Equipment (PPE): 防護メガネ、手袋、安全靴、呼吸器、聴覚保護など、適切な個人防護具の選定と使用。
- Lockout/Tagout (LOTO): 機械の点検や保守時に、エネルギー源を遮断し、意図せず作動しないようにする安全措置。
- Walking and Working Surfaces: 床の清掃、足場 (scaffolding) 、はしごの管理など、滑落や転倒事故の防止策。
- Electrical Safety / Fire Prevention: 感電防止策や火災時の対応、消火器の種類と用途など。
- Ergonomics / Bloodborne Pathogens: 身体負荷を減らす作業設計や、血液媒介病原体 (医療現場など) のリスクと対策。
講義はすべて英語。かつ、専門的な業界用語も多いため、正直に言えばかなりの集中力が求められます。最初は苦労しました。
それでも、章末にある演習問題に取り組むことで、少しずつ慣れていきました。知識が身につく実感があるのは、かなり励みになります。
試験と修了
すべてのモジュールを修了すると、最終試験に進めます。形式は選択式です。私は一度で合格できましたが、問題文の読解にやや時間を取られました。
試験結果はその場で即時表示されるため、合格かどうかすぐに分かります。合格後は、OSHA公認の「DOLカード (Department of Labor カード) 」が郵送で届くそうです。
これから受ける人へのアドバイス
OSHA 30 General Industryは、専門職だけのための資格ではありません。アメリカでの仕事に関わる多くの人にとって、知っていて損はない内容だと思います。
これから受講する方には、以下の点をアドバイスとしてお伝えします:
- まとまった時間を確保する: 1セクションが20〜60分程度あるため、細切れよりも数時間まとめて進めたほうが効率的です。
- デバイスの切り替えは最小限に: 私は学習時間のカウント不具合で何度か視聴し直す羽目になったので、1つの端末に固定するのがおすすめです。
- 英語が不安な方は先に用語を調べておく: OSHAや安全関連の用語集をあらかじめチェックしておくだけでも、だいぶ理解が簡単になります。
- 章末テストを復習に活用する: 模擬試験のような機能も兼ねており、本番前の感覚づくりにもなります。
まとめ
OSHA 30 General Industry を通して、安全とは「守るべきもの」であると同時に、「守ろうとする姿勢」の大切さに気づくことができました。
仕事で直接使う予定がない方でも、英語で学ぶ安全教育は有意義な経験になるはずです。もし迷っている方がいれば、ぜひ一歩踏み出してみてください。