キリル文字はロシア、ウクライナ、モンゴルなど複数の国で使われている文字だ。見た目はアルファベットに似ているが、読み方が違う。旅行先で看板やメニューが読めると便利なのはハングルと同じだ。
ハングル編では文字の組み立て方から覚える必要があったが、キリル文字は英語のアルファベットと同じく、1文字1音を左から右に読むだけ。構造の説明は不要なので、そのままメニューの解読に入る。
ロシア語のキリル文字は全33文字。このうち6文字は英語と形も音も同じなので、実質27文字を覚えればいい。題材はロシアのバーガーキング。ハングル編と同じく外来語メニューから始めるが、キリル文字圏のファストフードにはロシア語固有の単語も混ざる。外来語なら音で意味がわかるが、固有語はそうはいかない。その違いも扱う。
なお、この記事は旅行者が現地で看板やメニューを読める程度を目指している。正確な発音を学びたい場合は教科書等を参照してほしい。
Биг Кинг
最初のメニューはBig King。キリル文字で書くとБиг Кинг。6文字のうち半分はもう読める。
この6文字のうち、К, И, Г を除く3文字は実は英語と同じだ。ここでまとめて紹介する。
英語と同じ文字(覚える必要なし)
残りの3文字は英語にない形だが、読み方は単純。
「Б」は「b」。英語のBに相当する。 「И」は「i」。英語のNをひっくり返したような形。 「Г」は「g」。
Б(b) + И(i) + Г(g) = ビッグ、К(k) + И(i) + Н(n) + Г(g) = キング。ビッグキング。
ただし「Н」が出てきた。これが次のパートの話につながる。
偽の友 — 英語読みすると間違える6文字
キリル文字で一番厄介なのは、英語と同じ形なのに音が違う文字だ。見た目に騙されて英語読みしてしまう。ここでは「偽の友」と呼ぼう。6文字ある。
Воппер
バーガーキングの看板メニュー、ワッパー。
「В」はBに見えるが、実際は 「v」 の音。「Воппер」の先頭はBではなくV。「ヴォッペル」→ ワッパー。
Бургер
バーガー。すでにБ(b)は覚えた。問題は「Р」。
「Р」はPに見えるが「r」 の音。「Бургер」のРはRであってPではない。「ブルゲル」→ バーガー。
ついでに 「У」はYに見えるが「u」 の音。
Наггетс
ナゲッツ。先ほどБиг Кингで出てきた「Н」。
「Н」はHに見えるが「n」 の音。「Наггетс」の先頭はHではなくN。
Соус
ソース。
「С」はCに見えるが「s」 の音。「Соус」は「ソウス」→ ソース。
Хрустящая картошка
クリスピーポテト。これだけロシア語の固有語だが、偽の友の最後の1文字がここにいる。
「Х」はXに見えるが「kh」 の音。喉の奥から出す音で、日本語の「ハ行」に近い。
「Хрустящая картошка」は後のパートで改めて読む。ここではХの音だけ覚えておけばいい。
偽の友6文字をまとめる。
偽の友 — 見た目に騙されるな
新しい形の文字 — 外来語で拾える12文字
ここからは見た目で「知らない文字だ」とわかるものなので、偽の友ほど厄介ではない。外来語メニューで一気に拾っていく。
Чизбургер
チーズバーガー。
「Ч」は「ch」 の音。「Чизбургер」は「チズブルゲル」→ チーズバーガー。
Шримп Воппер
シュリンプワッパー。
「Ш」は「sh」 の音。「Шримп」は「シュリンプ」。Воппер(ワッパー)はもう読める。
Фиш Бургер
フィッシュバーガー。
「Ф」は「f」 の音。「Фиш」は「フィシュ」→ フィッシュ。
Двойной Воппер
ダブルワッパー。「Двойной」はロシア語で「ダブル」。
「Д」は「d」。「Й」は短い「y」 で、語末に出てくることが多い。「ドヴォイノイ」→ ダブル。
Капучино
カプチーノ。
「П」は「p」 の音。英語のPとは形が違うので注意。「Капучино」はそのまま「カプチーノ」。
Латте
ラテ。
「Л」は「l」 の音。
Эспрессо
エスプレッソ。
「Э」は「e」 の音。Еも「e」だが、Эはより「エ」に近い開いた音。外来語の語頭で使われることが多い。
Салат Цезарь
シーザーサラダ。
「Ц」は「ts」 の音。「Цезарь」は「ツェザリ」→ シーザー。ロシア語ではCaesarをЦで表記する。
ここまでの新しい形の文字をまとめる。
新しい形(外来語で拾えた文字)
Биг КингのБ, И, Гを含めて12文字。
ロシア語の壁 — 外来語では拾えない文字
ここからがハングル編との最大の違い。メニューページに出てくるが、ロシア語固有の単語なので音を読めても意味はわからない。それでも文字が読めるだけで、スマホの翻訳アプリに入力できる。
Завтрак
朝食メニュー。バーガーキングの朝食カテゴリに表示されている。
「З」は「z」 の音。「Завтрак」は「ザフトラク」。意味は「朝食」。
Мороженое
アイスクリーム。
「Ж」は「zh」 の音。英語にない音で、日本語の「ジ」に近い。「Мороженое」は「マロージェナエ」。文字数の割に長い発音になる。
Сырники
チーズパンケーキ。ロシアのバーガーキングにあるデザート。
「Ы」 は英語にも日本語にもない独特な母音。「ウ」と「イ」の中間のような音。「Сырники」は「スィルニキ」。
Хрустящая картошка
偽の友のパートで出てきたクリスピーポテト。今度は全体を読む。
「Щ」は「shch」 の音。Шの強い版。「Я」は「ya」 の音。
「Хрустящая」は「フルスチャーシチャヤ」→ クリスピー。「картошка」は「カルトーシュカ」→ ポテト。1つのメニュー名にЩとЯが両方入っていて効率がいい。
Большой
Lサイズ。サイズ表記に出てくる。
「Ь」は「軟音記号」 で、それ自体に音はない。直前の子音を柔らかく発音する記号。「Большой」は「ボリショイ」→ 大きい。ボリショイ劇場のボリショイと同じ単語だ。
Меню
メニュー。これはそのまま。
「Ю」は「yu」 の音。「Меню」は「メニュー」。ハングル編のㅠと同じ音だ。
Картофель Фри
フライドポテト。「Фри」はフライ(外来語)だが、「Картофель」はロシア語でジャガイモ。
КартофельにはЬ(軟音記号)が含まれている。Большойで覚えた文字の復習になる。
ここまでの文字をまとめる。
ロシア語固有の単語で拾えた文字
メニューに出てこない2文字
33文字のうち、ファストフードのメニューでは拾えなかった文字が2つある。
「Ё」は「yo」 の音。ただし、ロシアではЁの上の点を省略してЕと書くことが非常に多い。看板やメニューでもЕで代用されるため、読む側は区別しなくても実用上は困らない。
「Ъ」は「硬音記号」 で、Ьの逆。現代ロシア語ではごく一部の単語にしか出てこない。街中で見かけることは稀。
メニューに出てこない文字
総まとめ
全33文字の一覧。
英語と同じ
偽の友(見た目に騙されるな)
新しい形
記号
メニューに出てこない文字
ハングル編では文字の組み立てルールを覚える必要があったが、キリル文字は33文字の対応表さえ頭に入れば読める。特に偽の友6文字を押さえておけば、残りは見た目で「知らない文字だ」と気づけるので、対応表を見ながら読めばいい。
おまけ:国ごとのキリル文字の違い
キリル文字はロシア語だけのものではない。国ごとに文字が追加されたり、一部が使われなかったりする。この記事で覚えた33文字をベースに、各国で数文字足すだけで対応できる。
ウクライナ
ロシア語のЁ, Ъ, Ы, Эがなく、代わりに以下の4文字が加わる。
ウクライナ固有
ウクライナではマクドナルドが営業中。メニューはウクライナ語で表記されている。
モンゴル
ロシア語の33文字に以下の2文字が加わる。
モンゴル固有
ウランバートルの記事で訪れた街の看板も、この35文字で読める。
セルビア
ロシア語のЁ, Й, Щ, Ъ, Ы, Ь, Эがなく、代わりに以下の6文字が加わる。
セルビア固有
セルビアではキリル文字とラテン文字が併用されており、看板も両方で書かれていることが多い。