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Amtrak Empire Builder 乗車記 ― 大陸横断3,000km超の二昼夜

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旅行記 鉄道 北米・中南米 アメリカ合衆国
目次

先日、アメリカ北西部のシアトルから中西部のシカゴを結ぶAmtrakのEmpire Builder(エンパイア・ビルダー)号に乗車してきました。全区間で45時間、3,550kmにわたる長距離列車です。

予約から実際の乗車まで順を追ってご説明します。 乗車の際の注意事項も記載していますので、乗車予定の方のご参考になれば嬉しい限りです。

予約

予約はAmtrakのホームページから行います。 乗車駅・降車駅・乗車日を入力して検索します。シアトルはSeatle King Street Station、シカゴはChicago Union Stationが正式な駅名です。 検索結果に、直行便ではなく乗継便が出る場合があるので注意してください。 また、Empire Builder号は毎日運転の列車ですが、列車によっては運行頻度が低いものもあります。

列車を選んだら、座席のクラスを指定します。長距離列車の場合、座席車と個室があります。個室にはその中でさらにランクの低い順に、Roomette、Bedroom、Family Roomがあります。今回私は、Roometteを選択しました。

乗車するクラスを選択したらクレジットカードでチケットを購入できます。購入後はEメールで乗車券を受け取ります。

乗車の数日前にアップグレードを進めるメールが届く場合があります。航空券と同様に入札式になっており、入札額の高かった人からアップグレードを受けることができます。正規料金に比べると安い値段で購入できるためすぐに予約が入ってしまうようです。アップグレードを希望する場合はメールを受け取ったらすぐに登録することをお勧めします。

乗車まで

私は出発時刻の1時間ほど前にシアトルのKing Street Station駅に到着しました。

メールで受け取った乗車券のQRコードで乗車できますが、シアトル駅では紙のチケットを発券してもらうこともできました。紙のチケットを希望する場合は、切符売り場でメールの乗車券を提示すると発券してもらえます。

通常、寝台車に乗車する場合は、出発まで駅のラウンジを利用可能ですが、シアトル駅にはラウンジがありません。そのため、駅舎内のベンチで改札開始を待ちました。正確な時刻は忘れてしまいましたが、出発時刻の20分程前には乗車していたと思います。

改札ではまず寝台車の乗客が、次に座席車の乗客が案内されます。改札の際に車両番号を係員から言われます。その車両の前に行くと、車掌さんがいるため、チケットを見せて乗車します。この車掌さんはベッドメイクなども含め、到着までの身の回りの世話をしてくれる方でもあります。

車両は全て2階建てです。日本の車両と比べると高さがあり迫力があります。

  1. 1. Seattle King Street Station[16:55] → Chicago Union Station[16:45+2]

    Empire Builder(列車番号 8, 28)

発車後

定刻の16時55分、45時間にわたる列車旅の始まりです。途中のSpokane駅までは単独で走行し、Spokaneからは、ポートランドから来た28列車と連結してシカゴまで向かいます。

出発してすぐに車掌さんが部屋の案内をしてくれました。Roometteは2人部屋で、下は座席兼ベッド、上は組み立て式のベッドとなっています。昼間は座席として使用し、夜間は椅子を倒してベッドとして使います。また、部屋にはコンセントやライトなどがあります。

寝台車の場合、車両の入り口付近にあるペットボトルのミネラルウォーターも飲み放題とのことです。長距離列車のため飲み物の心配をしなくて良いのはありがたいです。コーヒーも同じ場所にあったように思います。

その後食堂の担当者が部屋を訪れ、夕食の予約を取りに来ました。18時、19時、20時のから時間を選ぶ形でした。メニューは部屋に置いてあるため、事前に決めておくことができます。朝食と昼食は予約不要で、直接食堂車に向かう方式です。寝台車の乗客は、食事代は運賃に含まれており、全て無料です。

なお、一部の市街地や駅の周辺を除き、線路は大自然の中にあるため携帯電話が通じないところも多くあります。時間を持て余さないためにも、事前にスマートフォンに本や動画等のコンテンツをダウンロードすることをお勧めします。

夕食

予約した夕食の時刻が近づいてきたので食堂車に向かいました。食堂車は2つ離れた車両にあり、2階の通路を通って移動します。 食堂車につくと席を案内され、メニューを選びます。

初日はAmtrak名物のステーキを注文しました。席は基本的に相席となり、他の乗客との会話を楽しむことができるのも魅力の1つです。私の拙い英語でも話を聞いてくれる人がいて感激しました。相席の方はSpokaneまで乗車し、翌日シアトルに帰るとの事でした。

まずは前菜のエビの天ぷらです。天ぷらと言うよりはフライです。スイートチリソースが美味でした。いよいよインディッシュのステーキの登場です。列車の中とは思えないクオリティーのステーキで量も満足でした。最後にデザートを食べて終了です。忘れがちですが、食堂車の方に向けチップを机の上に置いて帰りましょう。

シャワー

食後は、混雑する前にシャワーを浴びました。寝台車にはシャワーがついています。Roometteには部屋にシャワーがないため、共用のシャワールームを利用します。

シャワー室は前室とシャワー室からなっており、前室で服を脱いでシャワー室に入ります。前室とシャワー室の間のドアが空きやすい場合もあるため、全室には濡れて困るものは置かないことをお勧めします。私は大きなゴミ袋を持っていき、カバンや着替えはゴミ袋に入れて水がかからないようにしました。

前室に石鹸はありますが、シャンプーはありません。シャンプーが必要な方は持参しましょう。シャワーは温度を決めてボタンを押すとお湯が出る仕組みです。お湯が止まったらもう一度ボタンを押すと、お湯が再び出ます。中には腰掛けられる椅子があり、揺れる車内でも安心してシャワーを浴びられます。

タオルは前室に大量にあるため、それを使って身体を拭き、服を着ます。どうしても床が濡れてしまうため、次の人のためにタオルで床を拭いておきました。使用済みのタオルは前室の袋に入れておきます。

長時間停車

列車は走行中、数時間に1回程度、長時間定車があります。タバコを吸う方や外の空気を吸いたい方はこの時間に外に出ましょう。ただし車両から離れると出発合図が聞こえなくなるので要注意です。また、各車両の車掌さんが乗客の確認をしているため、自分の車両以外から乗車するのもNGです。夜も更けてきて、車掌さんがベッドメイクをしてくれました。電気を消して寝ます。夜間は放送もなくなります。

朝食

翌朝起きると大自然の中を走行していました。Spokaneから来た28列車と連結し、シカゴを目指しています。放送で朝食の案内がありました。朝食ではオムレツを注文しました。朝からなかなかのボリュームです。食べ終えた後は部屋に戻り景色を眺めながら本を読んでいました。昼になり昼食の案内がありましたが、朝食がボリューミーでお腹が空いておらずいつ行くか悩んでいたところ、最終案内となったため昼食はパスしました。夕方に昨日と同じように夕食の予約を取りに来ました。アメリカでは時差があるため、どの地区での時刻かを間違えないようにしましょう。

2回目の夜から翌朝

今日の夕食はチキンにしました。ソースは昨日と同じ味でしたが、それ以外は違うものを注文しました。この日は、帰省の帰路の親子連れと相席でした。

食後はシャワーを浴び、途中駅で少し外の空気を浴びて寝ました。

翌朝も同じように食堂車に行き、フレンチトーストを食べました。甘すぎずおいしかったです。ただ相変わらずのボリュームで、この日も昼食が食べられませんでした。

シカゴ到着

いよいよ夕方になると、終点のシカゴが近づいてきます。Amtrakでは、貨物列車等との行き違いで、列車が大幅に遅れることもよくありますが、今回は幸運にも定刻より少し早く、イリノイ州シカゴUnion Stationに到着しました。下車の際には車掌さんに忘れずにチップを渡しましょう。

45時間の列車旅はあっという間でした。アメリカの西側を横断するアメリカの大きさを感じることができる列車です。基本的には食べて寝るだけでしたが、それも贅沢な旅の過ごし方でしょう。

限られた日数のアメリカ旅行では、長距離列車を楽しむ機会もなかなかないかもしれませんが、日本でも数が減っている長距離寝台列車に乗れる貴重な機会ですので、ぜひお試しください。

hoinu
著者
hoinu
旅行、技術、日常の観察を中心に、学びや記録として文章を残しています。日々の気づきや関心ごとを、自分の視点で丁寧に言葉を選びながら綴っています。

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