ラーオ文字は、タイ文字と同じ仕組みで動く。母音が子音の前・後ろ・上・下に配置され、前に書いた母音を後に読む。声調記号が文字の上につく。
ただし子音の数が違う。タイ文字は44文字で21音を表す(同じ th の音に6文字もある)。ラーオ文字は1975年の文字改革で重複を整理し、27文字で同じ音をカバーする。形は違うが仕組みは同じ。
ラオスにはマクドナルドがない。代わりに、旅行者が必ず目にする ເບຍລາວ(ビアラオ)のラベルと、食堂のメニュー、街の看板からラーオ文字を読んでいく。
なお、この記事は旅行者が現地で看板やメニューを読める程度を目指している。正確な発音を学びたい場合は教科書等を参照してほしい。タイ文字を知っている人には対応する文字を併記するが、知らなくても読める。
タイ文字を知っている人へ:形を見比べてほしい
タイ文字とラーオ文字を並べると、形が似ている文字がかなりある。
| 音 | タイ | ラーオ | 似ている? |
|---|---|---|---|
| k | ก | ກ | ほぼ同じ |
| n | น | ນ | ほぼ同じ |
| m | ม | ມ | ほぼ同じ |
| l | ล | ລ | ほぼ同じ |
| w | ว | ວ | ほぼ同じ |
| ng | ง | ງ | 似ている |
| b | บ | ບ | 似ている |
| s | ส | ສ | 似ている |
| kh | ข | ຂ | 違う |
タイ文字を知っていれば、ラーオ文字の半分近くは「見ればわかる」。残りは新しい形として覚える必要がある。タイ文字を知らない人は、このテーブルは飛ばして次に進んでほしい。
ラーオ文字の基本構造
タイ文字と同じく、子音を軸にして母音が4方向に配置される。
- -າ → 母音が後ろ(aa)
- -ິ → 母音が上(i)
- -ຸ → 母音が下(u)
- ເ- → 母音が前(ee)。前に書いて後に読む
前に書いて後に読む母音は ເ-, ແ-, ໂ-, ໄ-, ໃ- の5つ。タイ文字の เ-, แ-, โ-, ไ-, ใ- と1対1で対応する。
ເບຍລາວ
ビアラオ。ラオスの国民的ビールで、国内シェア99%を誇る。旅行者がラオスで最初に目にするラーオ文字は、おそらくこのラベルだ。
「ບ」は「b」。 「ລ」は「l」。 「ວ」は「w」。
ເ-ຍ は複合母音で「ia」の音。ເ が前、-ຍ が後ろで子音を挟む。ເບຍ = bia = ビア → ビール。
「-າ」は「aa」。後ろに書く長い母音。ລາວ = laao = ラーオ → ラオス。
ເບຍລາວ = ビアラーオ → ビアラオ。
子音
母音
ວຽງຈັນ
ビエンチャン。ラオスの首都。
「ຈ」は「j」。 「ງ」は「ng」。
ເ-ຍ がまた出てくる。ວຽງ = wiang = ヴィアング。
「-ັ」は短い「a」。上に書く。後ろに子音が続くときに使う。ຈັນ = jan = チャン。
ວຽງຈັນ = ヴィアングチャン → ビエンチャン。
新出の子音
ເຂົ້າ と ນ້ຳ
ご飯と水。ラオスの食堂で最も見る2語。
「ຂ」は「kh」。息を強く出す「k」。 「ນ」は「n」。
ເ-ົາ は複合母音で「ao」の音。ເ が前、-ົາ が後ろ。ເຂົ້າ = カオ → ご飯。้ は声調記号。
「-ຳ」は「am」。子音と母音が合体した特殊な形。ນ້ຳ = ナム → 水。
タイ文字を知っている人なら、ข้าว(カーオ)と น้ำ(ナム)との類似に気づくはずだ。ラーオ語とタイ語は別の言語だが、基本的な食べ物の語彙は共通するものが多い。
新出の子音
新出の母音
ໄກ່ と ປາ
チキンと魚。食堂メニューの定番。
「ກ」は「k」。 「ປ」は「p」。
「ໄ-」は「ai」。前に書いて後に読む母音。ໄກ່ = ガイ → チキン。່ は声調記号。
ປາ = パー → 魚。ປ(p) + -າ(aa) の2文字だけ。
新出の子音
新出の母音
食堂メニューの定番語
ラオスの食堂で目にする調理法と味の表現。ここでテンポを上げて子音を追加する。
「ຜ」は「ph」。息を強く出す「p」。 「ຕ」は「t」。 「ມ」は「m」。 「ສ」は「s」。 「ດ」は「d」。
ຜັດ = パット → 炒めた。ラオスのメニューに ຜັດ(パット)がついていたら炒め物。ຜ(ph) + -ັ(a) + ດ(t) = パット。ດ は語末では「t」の音になる。
ຕົ້ມ = トム → 煮た、スープ。ຕ(t) + -ົ(o) + ມ(m) = トム。
ສົ້ມຕຳ = ソムタム → パパイヤサラダ。ラオスでもタイでも定番の料理。ສ(s) + -ົ(o) + ມ(m) = ソム。ຕ(t) + -ຳ(am) = タム。
ເຜັດ = ペット → 辛い。ເ(ee) + ຜ(ph) + -ັ(a) + ດ(t) = ペット。辛い料理についてくる。
新出の子音
ໝູ
ムー → 豚肉。ラーオ文字のちょっとした仕掛けがここで出てくる。
ໝ は ຫ と ມ の組み合わせ。ラーオ文字では一部の子音の前に ຫ(h)をつけて声調を変える。読むときは ຫ を無視して後ろの子音だけ読めばいい。ໝູ = ムー → 豚肉。
同じパターンで ໜ(ຫ + ນ = n)、ໝ(ຫ + ມ = m)、ຫຼ(ຫ + ລ = l)がある。看板で ຫ がついている子音を見かけたら、ຫ は読み飛ばしていい。
「ຫ」は「h」。単独では「h」の音。他の子音の前では声調変更の記号。
新出の子音
ຂອບໃຈ
コープチャイ → ありがとう。旅行者が最も使うラーオ語。
「ອ」は声門閉鎖音。ほぼ無音で、母音の台座の役割。
「ໃ-」は「ai」。ໄ- と同じ音。2つあるが使い分けは単語ごとに決まっている。
ຂ(kh) + -ອ(aw) + ບ(b) = コープ。ໃຈ = チャイ → 心。合わせて「ありがとう」。
新出の子音
ແຊບ
セープ → おいしい。食堂の看板やメニューに出てくる。
「ຊ」は「s」。ສ も「s」。ラーオ文字には s の音に2文字あるが、タイ文字の4文字(ซ, ศ, ษ, ส)と比べれば大幅に整理されている。
「ແ-」は「ae」。前に書いて後に読む母音。
ແຊບ = セープ → おいしい。ラオスの食堂で「ແຊບ!」と言えば喜ばれる。
新出の子音
新出の母音
ໂຮງແຮມ と ຫ້ອງນ້ຳ
ホテルとトイレ。街の看板で見かける。
「ຮ」は「h」。ຫ も「h」だった。ラーオ文字には h の音に2文字ある。
「ໂ-」は「oo」。前に書いて後に読む母音。
ໂຮງ = ホーング → 建物。ແຮມ = ヘーム。ໂຮງແຮມ = ホテル。
「-ອ」は「aw」。後ろに書く母音。
ຫ້ອງ = ホーング → 部屋。ນ້ຳ = ナム → 水。ຫ້ອງນ້ຳ = 水の部屋 → トイレ。
新出の子音
新出の母音
ラーオ文字が27文字で済む理由
タイ文字は44文字で21音を表す。ラーオ文字は27文字で同じ音をカバーする。
| 音 | タイ文字 | ラーオ文字 |
|---|---|---|
| th | 6文字(ฐ, ฑ, ฒ, ถ, ท, ธ) | 1文字(ທ) |
| kh | 5文字(ข, ฃ, ค, ฅ, ฆ) | 2文字(ຂ, ຄ) |
| s | 4文字(ซ, ศ, ษ, ส) | 2文字(ຊ, ສ) |
| ph | 3文字(ผ, พ, ภ) | 2文字(ຜ, ພ) |
| ch | 3文字(ฉ, ช, ฌ) | 1文字(ຈ) |
1975年の文字改革で、サンスクリット由来の重複文字が大幅に整理された。旅行者にとっては、覚える文字が半分以下で済む。
まとめ
この記事で扱った文字の一覧。
子音 — この記事で登場
子音 — 街中で見かける残りの文字
母音 — 後ろに書く
母音 — 上に書く
母音 — 前に書く(後に読む)
母音 — 複合
覚えておくルール
ラーオ文字はタイ文字の「簡略版」ではない。サンスクリット由来の重複を整理した「合理化版」だ。母音が前に書いてあるのに後に読む仕組み、子音を軸にした4方向配置、声調記号。これらはすべてタイ文字と共通する。違うのは子音の数と字形だけ。
ビエンチャンの街を歩くと、ທະນາຄານ(タナカーン=銀行)、ສະໜາມບິນ(サナームビン=空港)、ຕະຫຼາດ(タラート=市場)。ເບຍລາວ のラベルが読めたら、ラーオ文字への第一歩は完了だ。