東京は、ビルが立ち並ぶ大都会。でもその一方で、川沿いや下町には、意外な歴史や風景が残っている。 今回訪れたのは、東京23区内で唯一の自然島(諸説あり)、妙見島 (みょうけんじま) 。場所は江戸川区の東端、旧江戸川の中洲のような立地にある。
観光地ではない。特別な名所があるわけでもない。けれど、「23区に自然島がある」という事実そのものが面白い。 そんな小さなきっかけから、この妙見島へ足を運んだ。
妙見島とは
妙見島は、江戸川区東葛西3丁目に位置する、旧江戸川に浮かぶ細長い島だ。 南北約700メートル、東西は200メートルほど。周囲はすぐに川。船でしか行けない…というわけではなく、陸続きではないが、橋を経由して徒歩でアクセスが可能な構造になっている。
もともとは自然に形成された中洲で、東京湾の河口に近いこともあり、明治以降は工場用地として開発が進んだ。現在でも島の多くは工業地帯で、一般の人が訪れることは少ない。
浦安駅から妙見島へ: 川を越えて島へ渡る
この日は、東京メトロ東西線を使って浦安駅で下車。島の東側に最も近い駅だ。
浦安といえば千葉県のイメージが強いが、浦安駅はほぼ都県境に位置しており、歩いて10分ほどで東京都江戸川区に入ることができる。
駅から西へ進むと、すぐに旧江戸川が見えてくる。この川は、かつての江戸川の流路のひとつで、現在は穏やかな川面が住宅地と工場の間を静かに流れている。橋の歩道を歩いていると、眼下に見えるのが今回の目的地、妙見島だ。
島へ降りるスロープは舗装されており、歩行者であれば問題なくアクセスできるようだ。
工場地帯と川に囲まれた、静かな島
視界に入るのは、倉庫、トラック、コンテナ。建物はほとんどが工場か事業所で、人の姿もまばら。
島の入り口には、色あせた島内案内図が立っていた。文字は読みづらくなっており、場所によっては剥がれている。けれど、確かにこの場所が「島」であることを示してくれる、数少ない視覚的な証拠であった。


妙見島から葛西駅へ: 短い探検の終わり
妙見島を一通り歩いたあとは、浦安駅に戻ってもよかったが、せっかくなので隣駅の葛西駅まで歩くことにした。 旧江戸川沿いを北へ進み、住宅街を抜けて東西線の高架沿いに進むと、10〜15分ほどで葛西駅に到着する。
まとめ
妙見島は、東京という街が“水の都市”であり、かつてはもっと多くの島や中洲が存在していたことを思い出させてくれる島であった。
東京都心からわずか30分足らず。駅から歩いて行けて、川を越えて島に上陸するという体験ができる。 しかも、23区で唯一の自然島。地図好き、都市探検好き、そして「ちょっと人と違う東京を歩きたい人」にはぜひ訪れてほしい。