空港内を走るPeople Mover(自動運転鉄道)も鉄道の一種だ。後から乗り直しに来るのは現実的ではないので、空港を利用する機会があれば、そのついでに全区間乗っておくことにしている。シカゴ・オヘア国際空港のATS(Airport Transit System)もその一つ。

Amtrak Empire Builderでシカゴに到着した後、乗り継ぎまでの時間でオヘア空港内のATSを乗りつぶした。

ATSの概要

オヘア空港のATSは5駅を結ぶ全長約4.8km(3マイル)の自動運転鉄道。無料で24時間運行している。

  • Terminal 1
  • Terminal 2
  • Terminal 3
  • Terminal 5
  • Multi-Modal Facility(レンタカー・駐車場)

Terminal 4は欠番。片道の所要時間はTerminal 1〜Multi-Modal Facility間で約10分。ピーク時は3〜5分間隔で運行。最高速度は約80km/h(50mph)。

車両は3両編成で定員147名。2021年に大規模改修が行われ、車両数が15両から36両に倍増し、Multi-Modal Facilityへの延伸と新駅が追加された。改札やチケットはなく、誰でも乗車できる。

出典:Chicago Department of Aviation

ATSが必要になる場面

オヘアではターミナルをまたぐ移動が頻繁に発生する。たとえばユナイテッド航空の国際線はTerminal 5に到着するが、国内線への乗り継ぎはTerminal 1またはTerminal 2になる。この移動にATSが必要だ。ATSは保安検査の外を走っているため、ターミナルを移動すると到着先で再び保安検査を通ることになる。乗り継ぎ時間には余裕を見ておきたい。

乗りつぶし目的の場合も同じ問題がある。同一ターミナル内の乗り継ぎであれば本来は保安検査の外に出る必要はないが、ATSに乗るためにわざわざ外に出ることになる。戻るときに再度保安検査を通るため、時間には余裕を持つ必要がある。

乗車記録

10:09 – 10:15Terminal 3 → Multi-Modal Facility ATS$0
10:19 – 10:28Multi-Modal Facility → Terminal 1 ATS$0

Terminal 3から終点のMulti-Modal Facilityまで乗車し、折り返してTerminal 1まで戻った。これで全5駅・全区間を乗車。

誰が乗っているか

車内の顔ぶれは駅ごとにはっきり変わる。

Multi-Modal Facility駅では大きなスーツケースを持ったレンタカー利用者がどっと乗り降りする。家族連れやグループ旅行者が多く、車内が一気に荷物で埋まる。Terminal 5(国際線)の前後は、乗り継ぎ客が荷物を抱えて乗ってくる。一方、Terminal 1(ユナイテッドのハブ)からの乗車は比較的少ない印象だった。ORDでのユナイテッド利用者は乗り継ぎが多く、Terminal 1で降りる人より通過する人のほうが多いからだろう。

制服姿のパイロットやクルーが乗り合わせている場面もあった。ATSは旅行者だけでなく、空港で働く人の移動手段にもなっている。

もう一つ目を引いたのは、各駅にスタッフが配置されていることだ。ATSは無人運転だが、ホーム上にはサポートスタッフが常駐しており、乗客に行き先のターミナルを案内したり、大きな荷物の乗降を手助けしたりしている。初めてオヘアに来た旅行者が「Terminal 1に行きたいが、どちらのホームに立てばいいか」と聞いている場面を見かけた。国際線乗り継ぎの旅行者が多い空港ならではの対応だろう。他の空港のPeople Moverではここまで手厚い有人サポートは見たことがない。

混雑には時間帯による波がある。国際線の到着が重なる時間帯はTerminal 5周辺で混み合うが、それ以外の時間帯はガラガラであった。

車窓

ATSは高架を走る。空港のランドサイド(非制限区域)を上から眺める形になるため、ターミナルビルの屋根、駐機場に並ぶ機体、滑走路の端が次々と車窓に現れる。地下を走る空港(デンバーなど)のPeople Moverでは得られない眺めだ。チャイナエアラインの747型貨物機が離陸していくところも見えた。

車窓で目を引くのがオヘア・ヒルトンの建物だ。ターミナルに隣接する大きなホテルで、ATSの車内からよく見える。乗り継ぎのたびに横を通り過ぎるだけで一度も泊まったことはないが、大幅な遅延やキャンセルが出たときにはあの近さが効いてくるのだろう。

2021年の改修を経た車両は内装がきれいで、窓も大きく車窓が楽しみやすい。

乗りつぶしとしてのPeople Mover

ATSは片道約10分の短い路線で、乗りつぶしとしての難易度は低い。Terminal 3から終点まで行き、折り返すだけで全区間が済む。

ただ、用もないのに終点で折り返すのは少し気まずい。周りの乗客は全員どこかのターミナルに用があって乗っている。自分だけが乗ること自体が目的という状況は、乗りつぶしをやっている人間にしかわからない居心地の悪さがある。

他の空港のPeople Mover

アメリカの主要空港はターミナルが複数に分かれ、ターミナル間の距離も長いため、空港内に自動運転鉄道を敷設している空港が多い。ダラス、アトランタ、サンフランシスコ、デンバー、ワシントン・ダレス、ニューアークなど。アメリカ以外でもシンガポール・チャンギ空港など大規模空港に導入されている。

日本では関西国際空港のウイングシャトルが空港内の自動運転鉄道にあたるが、アメリカほど多くの空港に本格的な鉄道路線が敷かれている例は少ない。