タイ文字は子音が44文字、母音が約30種類、さらに声調記号がある。ハングル、キリル文字、ジョージア文字と比べて明らかに複雑で、全部を丸暗記するのは現実的ではない。
ただし、仕組みを理解すれば読めるメニューは一気に増える。この連載では子音の代表文字と基本母音を扱い、タイ文字の読み方の仕組みを身につけることを目指す。
- 第1回(この記事):子音8文字と基本母音。「母音が前にあるのに後に読む」仕組み
- 第2回:複合母音とタイ語固有の単語。ガパオライスが読めるようになる
- 第3回:同じ音に複数の文字がある理由と、残りの子音・母音の全体像
題材はタイのマクドナルド。外来語メニューに加えて、ガパオライスやお粥などタイ限定メニューが充実しており、タイ文字ならではの特徴を体験できる。
なお、この記事は旅行者が現地で看板やメニューを読める程度を目指している。正確な発音を学びたい場合は教科書等を参照してほしい。タイ語には5つの声調があるが、この記事では声調の読み分けは扱わない。文字の上につく小さな記号が声調記号だとだけ覚えておけばいい。
今回は4品のメニューで子音8文字と母音6つを覚える。「前に書いて後に読む」母音を3つ身につけるのがゴールだ。
タイ文字の基本構造
タイ文字は、子音を軸にして母音が前・後ろ・上・下の4方向に配置される。
たとえば子音 ก(k)に母音をつけると:
- กา → kaa(母音が後ろ)
- กิ → ki(母音が上)
- กุ → ku(母音が下)
- เก → kee(母音が前)
最後の例に注目してほしい。เ は ก の左側に書いてあるのに、読むときは ก の後に読む。これがタイ文字最大の特徴で、最も直感に反する部分だ。この「前に書いて後に読む」母音は4種類ある。今回はそのうち3つを覚える。
もう一つ。タイ語には単語間のスペースがない。ファストフードのメニュー名は短いので、この記事では問題にならない。
บิ๊กแม็ค
ビッグマック。最初のメニューで子音4つと母音2つを覚える。
「ก」は「k」。タイ文字の最初の文字。 「บ」は「b」。 「ม」は「m」。 「ค」は「k」。
ก も ค も「k」の音。タイ語には同じ音に対して複数の文字がある。理由は第3回で扱う。ここでは「k音の文字が複数ある」とだけ知っておけばいい。
母音を見ていく。
「-ิ」は「i」。子音の上に書く短い母音。บิ = bi = ビ。
「แ-」は「ae」。子音の前に書くが、読むときは子音の後。最初の「前に書いて後に読む」母音だ。แม = mae = メ。
記号も2つ出てくる。「็」は短縮記号で母音を短く発音する。「๊」は声調記号で、音の高さに関わるが、旅行者レベルでは読み飛ばしていい。
บิ๊กแม็ค = ビッグメック → ビッグマック。
子音
母音
โค้ก
コーク。短い単語で2つ目の「前に書いて後に読む」母音を覚える。
「โ-」は「oo」。子音の前に書いて後に読む。แ- と同じパターン。
โค้ก = コーク。้ は声調記号。読み飛ばしていい。
前置き母音は、形でパターンが見えてくる。แ- は横に広い形、โ- は丸い形。どちらも子音の左にあれば「これは母音だ」と判断できる。
新出の母音
ชีส
チーズ。ชีสเบอร์เกอร์(チーズバーガー)の前半部分。ここでは前置き母音から離れ、上に書く母音をもう一つ覚える。
「ช」は「ch」。 「ส」は「s」。
「-ี」は「ii」。子音の上に書く長い母音。บิ๊กแม็ค で出てきた -ิ(短い i)の長い版。
タイ語の母音には短い版と長い版のペアがある。-ิ(短い i)と -ี(長い ii)が最初のペアだ。
ชี = chii = チー。ชีส = チース → チーズ。
新出の子音
新出の母音
ไก่ทอด
フライドチキン。3つ目の「前に書いて後に読む」母音。そしてタイ語固有の単語への入口。
「ท」は「th」。英語のthではなく、息を強く出す「t」。 「ด」は「d」。
「ไ-」は「ai」。子音の前に書いて後に読む。
ไก่ = kai = ガイ → チキン。่ は声調記号。
「-อ」は「aw」。これは子音の後ろに書く母音。前置きではない。ทอ = thaw = トー。
ไก่ทอด = ガイトート → フライドチキン。
ไก่ はメニューだけでなく、タイの街中のあらゆる食堂や屋台に出てくる。タイ文字で最初に覚える実用語と言っていい。
新出の子音
新出の母音
まとめ
4品のメニューで子音8文字、母音6つ、記号3つを覚えた。
子音(8文字)
母音 — 上に書く
母音 — 後ろに書く
母音 — 前に書く(後に読む)
記号
今回の核心は「前に書いて後に読む」母音。แ-, โ-, ไ- の3つを覚えた。タイ文字を見たとき、子音の左側に何かがあればそれは母音だ。
「前に書いて後に読む」母音はもう1つある。4つ目の เ- は最も頻出する前置き母音で、他の母音と組み合わさって複合母音を作る。第2回では เ- を軸にバーガー、ナゲット、フレンチフライ、そしてガパオライスを解読する。